夫に後見人 家族信託の併用は?

 夫の認知症発症に備えて成年後見制度を利用することに決め、任意後見人には専門家を選びました。私の生活費や、夫保有の株式について不安を感じています。家族信託を併用すべきでしょうか。(70代、女性)

株式など財産の管理が可能に

 成年後見制度が始まると、後見人(今回は専門家)がご主人の口座を管理することになります。金融機関では「後見の届け出」が行われ、口座は後見人の管理下に置かれて通帳なども後見人に引き渡されます。

 これまでご主人から生活費を受け取って生活していたと思いますが、後見制度が始まると、ご自身で自由にお金を引き出せなくなります。そのため家族信託を利用して数百万円から数千万円を信託口口座に移し、ご自身が受託者として管理したいと考えられることは理解できます。

 成年後見制度では、ご主人が扶養義務を負う配偶者への生活費は原則「扶養料」として支出が認められます。あなたが任意後見人ではなく専門家を後見人に選んだ点は、利益相反に当たらず安心材料となります。

 ただし、扶養料の必要性や金額は後見監督人を通じて家庭裁判所に報告され、裁判所が認める範囲での支給に限られます。そのため、希望額より少ない可能性も否めません。

 任意後見制度と家族信託制度は併用可能です。家族信託契約で設定した信託財産はあなたが受託者として管理できます。しかし、その使い道はご主人の利益に限られるため、生活費の考え方は専門家に任意後見人をお願いした場合と大きな違いはありません。

 しかし、信託財産を管理できることが家族信託のメリットの一つです。ご主人は株式など投資資産を多くお持ちのようですから、家族信託を活用して信託口口座を証券会社に設けておくと、相場を見てあなたが売却・現金化できます。家族信託のご相談も承っております。<たのシニア生活彩り俱楽部アドバイザー(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>